先日は、在日イタリア商工会議所様主催の第11回イタリア料理コンクールの決勝戦にお邪魔しました。
このコンクールは、世界イタリア料理週間のプロジェクトの一環として開催され、日本のイタリア料理界を担う新しい料理人発掘のため、及び、日本における本場イタリア郷土料理の知識向上と普及を目的としています。
応募資格は、プロの料理人として実務経験2年以上有する方で、イタリア以外の国籍を有する日本在住者。
全国各地で活躍している若手イタリアン・シェフから応募があり、オープン投票などを経て、8名のファイナリストたちが優勝を目指して決戦に挑みました。
今回のコンクールのテーマは
「Life is short like a pasta!」
ショートパスタの選手権。
パスタは用意された乾燥のものでも自家製のパスタどちらでもOK。
各シェフの持ち時間は1時間で、完成したシェフから手を上げて審査へ。
審査員は、全員料理に関わる在日イタリア人。
- カルミネ・アマランテ氏(☆審査委員長 / アルマーニ・レストラン エグゼクティブシェフ)
- ジョルジョ・マテーラ氏(ディ・ジョルジョ、オーナー)
- エリオ・オルサーラ氏(エリオ・ロカンダ・イタリアーナ、オーナー)
- ピエトロ・アンドロゾーニ氏(マンマ・ルイーザズ・テーブル、オーナーシェフ)
- エマヌエーラ・オリーギ氏(アッカデミア・イタリアーナ・デッラ・クチーナ-東京支部)
審査項目は、盛り付け、味、パスタの特性を活かせているか、創造性、伝統イタリア料理の尊重の5項目で、各項目は0〜10点で採点。
オリーブオイルは、JOOP2020に入賞したイタリアのエキストラヴァージンオリーブオイルをストロング、ミディアム、マイルドと料理に合わせて選べるように北から南まで8種類を用意。
1.宇野 友康シェフ(Ristorante Carlotta / 広島)
▼長野県産 鴉のラグーを詰めたファゴッティーニ ポルチーニ茸と栗のカプチーノ仕立て ピエモンテ産トリュフの薫り
現地でも食べられているポルチーニ茸・栗の組み合わせに白トリュフを合わせ、ピエモンテらしさを表現。
合わせたショートパスタは、包むという意味のファゴッティーニで、イタリアの郷土料理に少し日本ならではのエッセンスをと考え、
日本特有のジビエである「鴉」を選んだそうです。
2.斎藤晴威シェフ(Ristorante vescovado / 神奈川)
▼Trofie carbonara di mare con salsa verde e giardiniera rapa rossa
リグーリア州で修業した経験を元に、リグーリアの伝統パスタのトロフィエとローマの伝統料理のカルボナーラを合わせた。
具材はホタテ、エビ、パンチェッタを使ったカルボナーラに、カッポンマーグロに用いるサルサヴェルデとビーツの酢漬けで味の変化をつけたそうです。
3.木田 佳孝シェフ(OPPLA'! DA GTALIA / 東京)
▼ファゴッティーニ 甘鯛 発酵トマト バジル
イタリア伝統料理であるアクアパッツァに日本の旨味、出汁の文化を取り入れ、甘鯛の身とスープをリピエーノにしたファゴッティーニ。
発酵により旨味を引き出したトマトのソース、アサリの出汁にバジルの香りを移した泡のソースを添え、甘鯛の鱗をフリットにし、味わい、食感共に楽しんでいただける一皿。
4.龍口 真人シェフ(オステリア ダ アダ / 東京)
▼Stratioti con Venezia alla arancia cuore
ストラディオットの帽子とヴェネツィア 〜オレンジの心〜
ヴェネチアではトルテッリのことをストラディオットとも呼び、それは赤い装備で統一した中世の軽装傭兵の名で、その活躍は戦場を一新。
コロナ禍の今、不屈の心で困難を乗り越え、外食を心から楽しめる日が一日も早く戻るようにと願いを込めたそうです。
パスタの中には干し鱈のペースト、ソースはペスカトーレでヴェネチアを表現。隠し味のオレンジと融合し味わいが完成。
5.及川 健一シェフ(XEX日本橋 / 東京)
▼カサレッチェ 鯖 フェンネル 白味噌 鯖節
シチリア伝統の味「Pasta con le sarde」を元に構築。本来は鰯で作るこのパスタを、同じ青魚でイタリアでもよく食べられる鯖でアレンジ。
より鯖を感じられるよう鯖節から引いた出汁を合わせ、白味噌をアクセントに、イタリア料理の中に日本らしさを加えた一皿。
6.大島隆司シェフ(芦屋BOTTEGA BLUE / 兵庫)
▼Salsa di pomodoro alle conchiglie con gamberi del mare dell’Asia
天使のエビ トマトソース アジア風
エビとトマトの定番パスタをアレンジ。天使エビはルッコラとともにミンチにしラグーに、エビの殻から出汁をとり、フレッシュトマトを煮込んでソースに。
カレーとココナッツを使用したアジア風ソースがアクセント。エビの旨味にスパイシーな香りが食欲をそそる一品。
イタリア料理の調理法をきっちりおこない、日本的な構成と個性を楽しんで欲しい。
7.嶋田 由佳理シェフ(ricco e bello / 大阪)
▼望郷のペンネカチョエペペ
出身地鳥取県では夏から冬にかけて青梨、赤梨と様々な品種が楽しめ、今の時期に身近な食材である梨「王秋」と、梨の風味と相性が良いオリーブオイル、チーズ、胡椒を使い、ペンネリガーテでカチョエペペに仕立てた。梨のジュースの泡をのせ、青レモンを削り、最後に赤胡椒をかけ、皿の上で梨の花を表現。
8.木村 忠敬シェフ(RISTORANTE ALVERO / 広島)
▼カプリ島。アウグストゥス庭園からの眺め。
イタリア料理を作る上で最も大切にしているのは、体に良い食材を使うことと、鮮やかな色づかいで盛り付けること。
今回は、カプリ島の素晴らしい景色を表現するために、青い海、白い岩壁を器で表し、山の緑、庭園の緑を料理で表現。
バジルを炒って風味を強めたスープをジュレ、泡、チュイル、ソースに変化させ、コンキリエをより美味しく楽しめるように工夫。
全ての審査が終了し、いよいよ結果発表!!
▼第11回イタリア料理コンクールの優勝者は木田 佳孝シェフ。
木田シェフは、ピッツェリア「オップラ! ダ ジターリア」にお勤めで、普段はもっとカジュアルな料理を作っているとのことで、コンテストにおいては、伝統を踏まえつつもオリジナリティを追求し、”旨味”をテーマに「だしの文化」を取り入れたそうです。
審査委員長のカルミネ・アマランテ氏は、シンプルさ、食材の旨味をだすというのがイタリア料理なので、甘鯛とトマトのパスタはお気に入りとして記憶に残っているとのことでした。
どの料理も本当に美味しく、食材の組み合わせや盛り付けなど、大変勉強になりました。
決勝戦を拝見できる貴重な機会をいただき、ありがとうございました!!